お久しぶりです。物凄く。
基本社畜で余裕が出来た時にそろっと帰ってくるので、サイトはほとんど放置されていてこの有様です。本当に申し訳ない。三月に拍手送って下さった方、このような辺境のサイトにお越し下さりありがとうございます。
しれっと短編「花盗人」追加しました。
そして、本題です。
主人公共同戦闘企画様が4月12日に閉鎖されていたことにようやく気付き、リンクの削除変更を行いました。ほんの数作品ですが、主人公大好き人間として、参加が出来て本当に楽しかったです。主催者様、このような素晴らしい企画をありがとうございました。
以下、雑談。
さて、企画様のお題に沿った長編の案がございまして。
途切れ途切れに書いていたのですが、恐らく永遠に完成しなさそうなので、しれっとここに置いておきます。
お題については『主人公たちに纏わる記憶記録がなくなった』というものです。(※大分省略されています)
あらすじ。4世界の黄金の腕輪の喪失、5世界の進化の秘宝を調べていた学者の失踪、7世界マーディラスにて過去の資料の盗難という三つの事件が人知れず同時に発生します。それらは一人(一匹?)の黒幕によるもので、彼は進化の秘宝やマナスティスを用いて驚異的な進化を果たし、神の領域に到達します。
彼は9つの世界の神を封印し、全ての世界に絶対的な存在として君臨します。
彼にとって英雄たちの存在は目障りであり、彼らの存在を抹消しました。
抹消したはず、でした。英雄たちは結集し、彼の住む神殿まで迫ってきます。
今度こそ完全に抹消する為、彼は全世界から英雄たちに縁のある国や人物を呼び、絶対的な存在として命令を下します。
奴らは世界の敵である。奴らを殺せ、と――
(以下、書きたい所だけ書いた小説)
◆◆◆
絶望を形に出来るなら。それは今、目の前に広がる光景のことだろう。
地平線を埋める大軍。そこから上がる軍旗の中にトロデーン国の旗を見つけた時、エイトの口から笑みが消えた。他の仲間も同様だ。故郷の旗、自国の旗、仲間の国の旗、かつて自分が救い出した国々――その全てが神殿を守るように陣を敷いていた。その軍を率いるのもまた、自分の家族、あるいは仲間であることは簡単に想像がつく。
「この大軍を越えなければ、神殿には行けない……」
故郷の軍旗を見つめたまま、ローランは呟く。
剣を交えることは避けられない。その事実に、ごくりと誰かが唾を呑んだ。
「向こうは俺たちの事を何一つ覚えちゃいねぇ。殺す気で来るだろうな」
「本気でやり合わないと、殺されるのは私達ですね」
斧の柄を握るナインの小さな手が、微かに震える。人々を守る為に磨いた刃を、その守るべき対象に向けるという矛盾。それはその小さな手にはあまりにも重すぎた。
「国に帰る為に、国と戦わなければならないなんて……そんなの、意味ないじゃないですか……っ!」
エイトが口にした言葉は、その場の全員の胸中にあるものだった。重苦しい空気が辺りを包み込む。しかし、選択の時は確実に迫っていた。イザが癖のついた青い髪をがしがしと掻きながら、一歩前に出る。澱んだ空気がゆっくりと動き出し、八人の視線は自然とイザに集まる。
「こりゃ、今までにないピンチってヤツだ」
そう言ってイザは振り返った。その口に、いつも通りの快活な笑みを浮かべて。
「だってさ、こんだけ人数いたら宴会用のメシも酒も足りないだろ!」
大軍を背にして、大きく手を広げる。呑気で楽天的な声。重苦しい空気を一気に取り払うその一声に、マリアは一歩前に踏み込んでイザの隣に並び立つ。
「そうだな。戦いの後は宴会だ。全世界の酒をかき集めて来なければ」
イザとマリアの間で視線が交わり、互いの意思を確認して強く頷く。
「戦いの後は宴が付き物だもんな」
ローランが前に踏み出すと、バルテルミーも頷いて後に続く。隣に立った子孫たちを見て、マリアは嬉しそうに目を細めた。
「うん。魚も肉も野菜も、たっぷり用意しないとだめだね。特にうちの子は食べ盛りだから」
「あ……魚なら、フィッシュベルに魚を塩漬けにしたのが沢山あるよ」
「いいね、僕も子供たちも塩漬けは大好きなんだ」
リュカとアルスも共に前に踏み出す。穏やかに微笑み合う顔からは、絶望的な状況に置かれていることは感じられない。
「皆さんが食べて飲んで酔いつぶれたら、リッカの宿屋にご案内しなきゃいけませんね」
ナインは可憐な笑みを取り戻し、力強く一歩前に踏み込む。
「だけど、どうやって神殿に行くっていうんですか。僕は、陛下や姫様に刃を向けることなんて――」
「だったらなんだ。テメェはここで諦めんのか」
ソロがエイトの前に立つ。
「故郷に帰れる可能性が少しでもあるなら、俺なら這ってでもその可能性を掴み取りに行く」
向けられた眼差しの強さに、その言葉の重みに、エイトは息を呑んだ。
「エイト、テメェは違うのか」
「……いいえ。違いません」
泣くのを耐えるように引き結んだ唇を無理やり動かし、笑みを作る。そして一歩踏み込んでソロの隣に立った。
「陛下も、姫様も、仲間も……この場にいる誰一人として失うことなく、自分の居場所を取り戻せる可能性があるのなら。僕も、行きます」
「へーきへーき、なんてったって世界を救った奴が九人もいるんだぜ! なんとかなるって!」
「イザが言うとなんだか本当になんとかなる気がするよね」
アルスがそういうと、賛同するように皆微笑んだ。
「よぉし! 何か作戦あるやつは手を上げろ!」
「そんな、そう簡単に出て来る訳……」
す、と天に向けて真っすぐ伸びた手が一つ。
「……バル?」
ローランは彼の真意を探るように、その目をじっと見つめる。
「作戦はあるけど、本当に可能かは分からない……のか?」
バルテルミーはゆっくりと首を縦に振る。それを見て、イザは笑みを浮かべた。
「よーし。その作戦、乗った!!」
◆◆◆
黒幕候補はいくつかありますが、決まりません。マルチェロさんなら自我維持したまま進化出来そうですが、ED後だと世界征服しなさそうだなぁ……と悩んでるから書けないんですよね。
落ちだけは決めてます。バルテルミーの「ふっかつのじゅもん」により全員の記憶が戻るきっかけを得て、そのまま総力戦。とどめは全世界分の思いを乗せたミナディンとか熱い。
以上です。ここまで読んで下さりありがとうございました。